一般記事
東海地域の自動車関連中小企業は、取引先からの強いコストダウン要請に応じるために東南アジアなどの海外へ生産をシフトしようとする動きが出始めているという。経済産業省がまとめた2011年10〜12月期の地方経済産業調査が指摘した。海外生産シフトは、円高による企業収益の圧迫や海外メーカーとの競争激化を要因に進もうとしている。
この調査は北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の10地域で、各地方経済産業局などが管内企業から聞き取り調査した結果をまとめているが、自動車産業との取引ウエートが高い東海地区では、中小企業にもそれなりのプレッシャーあり、中小企業経営者は覚悟を求められている。
一方で東海地区の自動車産業は、タイ洪水の影響による一時的な減産がほぼ回復して、挽回のための増産に入ったことで、雇用面では期間従業員の求人が高まり、有効求人倍率は上昇、各社が働き手を奪い合う状況にあるそうだ。全国的には多くの地域で鉱工業生産指数は低下傾向を示し、持ち直しの動きは弱まっているのだが、比較的自動車産業は底堅い。九州でも、タイ洪水被害の影響が限定的であったことや新型車効果などにより自動車生産は高水準という。
だが、これは一時的なもの。厳しい水準の円高下で値下げ要求は厳しく、耐えるのは中小企業にとって至難の業だ。成否はともあれ、自動車メーカーや大手の部品メーカーの要求を実現するために、海外生産に活路を見いだそうとする中小企業が増えることは確実だ。
【DANN編集長】
|
電気自動車(EV)が、家庭でもコンセントで充電できる、などと評判を集めている。自然エネルギー利用が進めば、さらに移動手段の主役としてEVの地位が高はまるはずなのだが、早くも先端のEV研究者の間で、EV用リチウムイオン電池の限界が見えてきた、と言われ始めている。
最先端のEV用に搭載されたリチウムイオン電池だが、各社が開発を競ってもこれ以上の性能向上が見込めないということだ。5人乗りの小型セダンタイプのEVで1回の満充電により200キロの走行が可能としているものの、エアコンやヒーターを利用すればその半分、条件によっては100キロも満たない。悩みのタネは相変わらず電池なのだ。
このため自動車メーカーは、大容量電気の出し入れが得意なキャパシタを注目しだしている。キャパシタを製造するメーカーの話では、リチウムイオン電池と併用することで、スタート時など大容量の電力を必要とするときはキャパシタから電気を送り、リチウムイオン電池の負担軽減を考えているそうだ。
もっとも自動車メーカーのEV開発担当者が抱える最大の悩みは、電池メーカーがリチウムイオン電池のスペックや能力に関する詳細データーを公開してくれないことにある。大学などの研究室にも外部にはひた隠しだそうだ。最先端分野で企業の開発競争が厳しいことわかるのだが、隠すこと自体が怪しい。リチウムイオン電池の性能が足踏み状態にあることを示していないのか。
【DANN編集長】
|
新エコカー補助金の対象車に米ビッグスリーの車が加わった。経済産業省は20日、国土交通省と示したエコカー補助金対象車に輸入自動車特別取扱制度(PHP制度)で認められた輸入車9ブランド16型式(13車種)を追加した。これまでエコカー補助金の対象車に米国車は含まれていなかったが、ゼネラル・モーターズ(GM)、クライスラー、フォードの主力車種がようやく補助金対象車となることができた。
PHP自動車は外国メーカー車の輸入を促進するための優遇措置、PHP制度に基づき輸入された車。型式の取得手続きを簡素化しているため、日本の公式燃費値を持たず、本来的にはエコカー補助金の対象車になりえない。だが前回のエコカー補助金実施時に米国側から強い要求があり、途中から母国での燃費計測値をエコカー基準に採用することで、PHP自動車を補助金対象に加えた。
今回の新エコカー補助金で、米国車は当初「テスラ・ロードスター」の電気自動車のみが対象だった。このため経産省はPHP自動車の対象基準設定で苦心を重ね、米国の意向を配慮してビッグスリーのモデルを補助金対象に加えた。
対象となった米国車は、キャデラック「CTSセダン」「CTSスポーツワゴン」「SRX」、ジープ「グランドチェロキー」、フォード「エクスプローラー」の5車種。いずれも各ブランドの主力車種ではある。果たしてビッグスリーが期待する販売実績につながるかどうか、それはまた別ものかもしれない。
【DANN編集長】
|
中国市場の廃車リサイクルに国内外の各方面が高い関心を持ち始めている。中国では保有車両の拡大とともに廃車発生量が拡大、数年前まで40万台程度の発生量だったものが、2010年に100万台を突破、今後5年程度で廃車発生量は年間500万台以上になると見られるからだ。
中国にとって廃車は鉄、非鉄、希少金属をさらに樹脂類と多様な素材を持つ貴重な資源となる。さらには修理用に利用する中古部品やリビルト部品の原料にもなる。その集荷は大きな利権につながる。
現在、政府系を含めいくつかのプロジェクトが動き出しているが、最大は上海市の近郊の江蘇省張家港市で始まっているプロジェクトだ。自動車リサイクルのモデル事業を構築するため、中国政府は張家港市の港湾だけに廃車の輸入を求めているからだ。
まず経済発展が進んだ沿岸部から発生し始めるとみられる廃車は、多くが中国の西部に流れて行くと見られるものの、半分程度は沿岸部で処理される可能性がある。さらに現在、進んでいるプロジェクトに名乗りを上げて成功したものが、中国全土を視野に入れた廃車リサイクルに参入しやすくなるとも考えられている。中国国内で新規の有望な投資先がなくなったことも手伝って、政府高官筋の投資会社や直近までの不動産バブルでもうけた不動産会社、さらには外資系のスクラップ会社などが張家港市のモデル地域で名乗りを上げ、事業を軌道に乗せようとしている。
【DANN編集長】
|
復活予定のエコカー補助金の対象に「フィアット500(チンクエチェント」シリーズの2気筒ターボエンジン搭載車の上級グレード2モデルが入ったフィアット。輸入元フィアットグループオートモービルズジャパン(FGAJ)は、4人乗り以上のガソリン車で「環境性能ナンバーワンの輸入車はフィアット500シリーズ」とばかり、「エコカー」としての宣伝に力を入れ始めた。
500シリーズは欧州で環境性能ナンバーワンに選ばれた実績を持つ。しかし日本ではエコカー減税の対象とならず、環境性能の訴求に出遅れた。価格帯で販売競合する「フォルクスワーゲン・ポロ」が燃費の良さとエコカー減税対象車であることを売りにして成功をしたのに対し、消費者に環境性能の高さを認めてもらうことに苦労してきた
今回のエコカー補助金の対象となったのは、500シリーズのうち新開発2気筒875ccターボエンジン「ツインエア」搭載車。この新エンジン搭載車は従来の1400ccエンジン搭載車に代わるモデルで、10・15モード燃費で21.0キロ/リットルと高い燃費性能を持っている。追加発売したのは昨年3月、発売時期が東日本大震災と重なったことも運が悪かった。
それがエコカー補助金の対象となり、復権のチャンスを迎えた。輸入元のFGAJは、ツインエア搭載車が欧州一のエコカーであること消費者に伝えやすくなったとみる。販売価格帯では「トヨタ・プリウス」など国産ハイブリッド車との競合もあるものの、500シリーズの宣伝活発化は、環境性能の高い輸入コンパクトカーに目を向ける消費者を増やすことにつながる。
【DANN編集長】
|
イラン情勢が緊迫化している。日本も米国のイランに対する経済制裁措置に同調して、イランからの原油輸入を削減する方向を打ち出した。原油価格高騰は必至な情勢で、国際的な指標であるWTI価格は上昇傾向、1バレル150ドルを超える可能性も出てきた。
国内のガソリン販売価格が今後どう推移するのかは気になるところ。さらに地政学的リスクが高まることになれば、中東からの原油輸入、さらには天然ガスの輸入もストップする事態も想定され、単にガソリン価格が高騰するどころの話ではなくなる。
「米国はいったい何を考えているのだろう」とぼやきたくなるが、日本やアジア向けに中東からの原油・天然ガスの供給がストップすれば、米国にとっては好都合。開発が進んだシェールガス(非在来型天然ガス)を日本、アジアに供給すればよいし、反対に資源を持たない日本は受け入れざるを得なくなる。
シェールガスは基本的に天然ガスと同じ成分。生成過程ではブタン、プロパンのLPGと同じ成分も産出する。すでにスポットでシェールガス由来のLPGが日本に輸入されている。今後の中東情勢いかんだが、CNGでもLPGでもガソリン車を諦めて、早めにガス自動車に改造するのも防衛策として選択肢のひとつになりそうだ。
【DANN編集長】
|
トヨタ自動車の新型ハイブリッド車「トヨタアクア」、12月26日発売時点の事前受注台数は6万台と好調なスタートを切った。全国の多くのトヨタ販売会社で、事前受注台数は3月までの配車枠に達してしまった。エコカー補助金もあって順風満帆の出足だが、トヨタ販社の幹部たちの悩みは深い。
4月以降分のトヨタからの配車枠を巡る戦いは始まったばかりで、その確保が販社ごとの浮沈を分ける。ハイブリッド車が上げ潮ムードにあるだけに「敵はトヨタの販社」という声すら聞こえるほど、各販社がこれまでに経験したことがないほどの激しい状況にある。
アクアの取り扱い販社はトヨタ店、トヨペット店、トヨタカローラ店、ネッツ店の4系列。量販車の4系列併売は「プリウス」「プリウスアルファ」に続く3車種目となった。「これから出てくる新規開発車はすべて併売」(東京都内のトヨタ販社幹部)とされており、今後、トヨタが新型併売車の配車枠を決める際、アクアの販売実績が基準のひとつになるからだ。
トヨタの各販社にとって、アクアの受注を増やすことは、次の併売車が導入される際の初期配車枠の確保につながる。だが人気の新型車販売で値引き競争はご法度。各販社の活動の重点はアクア発売の宣伝にトヨタが力を入れている間に、自社のイメージと店舗の認知度を高めることにある。トヨタ車以外の新規客をどれだけ店舗に呼び込めるかが最大のテーマとなっている。
【DANN編集長】
|
2011年の新車販売台数は登録車、軽自動車を合わせて前年比15.0%減の421万台にとどまった。内訳は登録車が同16.7%減の268万9千台、軽自動車が同11.9%減の152万1千台。東日本大震災とタイの洪水と2度にわたる部品調達網の寸断が新車生産の足枷となり、新車販売を大きく落ち込ませた結果となった。
前年比10.3%増の1277万8千台(速報値)と、2年連続して2ケタの伸びを示した米国市場でも同じ理由で日本車は振るわず、トヨタ自動車、ホンダの2社は前年実績を割り込んだ。
年明けの自動車関連ニュースは昨年の暗い結果を報じているが、新車販売が落ち込んだ原因を地震や洪水という天災のせいにできるのは幸いかもしれない。モデルに人気や魅力がなければやはり販売は落ち込むが、重なった天災が、品質評価や人気に陰りが出てきた日本車の現実を見えにくくしている面があるからだ。
国内販売ではエコカー補助金が復活としたとはいえ、早くも「アクア」の投入でハイブリッド車を充実させたトヨタの一人勝ち的報道があることが好例だ。トヨタ式のハイブリッドが乗用車の世界スタンダードにはなりそうもないのだが、それに代わる魅力や価値の創造がない。早く世界に通じる新たな日本車の価値を生み出さないと、新興国の追い上げに苦しむだけになる。
【DANN編集長】
|