一般記事
経済産業省は産業構造審議会に産業競争力部会を設置、5月までに「産業構造ビジョン」を取りまとめる作業に入った。成長を支える産業の将来像を示すことを目的とする部会で、煎じ詰めれば、基本的に輸出産業として日本経済を支えてきた自動車産業への依存体質を大きく変えることが将来ビジョンの肝になる。
2000年から07年にかけて、名目GDPは2.5%伸び率になっているが、そのおよそ半分1.1%が自動車産業によるもので、21世紀になってから日本経済は自動車依存で体裁を保ってきた。その波及効果は大きく、鉄鋼産業は生産量の60%を自動車産業に依存するまでになっている。当然、自動車に限らず今後の市場は中国、インドの新興国にシフトすることになり、現地生産が拡大すれば、日本の産業の空洞化が進む。
だから自動車産業に代わる戦略分野を提示しようというのだが、初回の同部会の会合を見ていると、委員の理念ばかりが先行し、「まとめの作業が大変だ」というのが第一印象。実質的に自動車産業に代わる産業がすぐに見つかるわけでもなく、次の産業を育成する長期の展望が必要になる。いや、時間をかけても自動車産業ほどの雇用吸収力と他産業への波及効果を持つ産業は見つからない可能性のほうが高いのだ。
だからトヨタの米国でのリコール問題が痛いのだ。この問題、長期化するとの見方が一般的。解決がもたつく感に日本経済がさらに後退するかもしれない。
【DANN編集長】
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本当に地球は温暖化しているのだろうか?−。温暖化データの改ざんが明らかになった昨年の「クライメートゲイト」事件以降、温暖化懐疑論者の勢いが増している。温暖化は人為的な要因としたICPP(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告書に対する批判も強まり、報告書に盛り込まれたヒマラヤ氷河の解氷速度が誤りだったことが指摘され、ICPPも数値に科学的根拠がないことを認めた。
報告書では2035年にヒマラヤの氷河がなくなってしまうとしていたが、2350年を誤って2035年として記載したという説もある。産業発展を意識する中国政府は、ICPPの報告書に温暖化懐疑論があることを併記するように求めている。エネルギー利用の効率化は追求するが、経済活動を縮小したくないという立場だ。
しかし日本は、地球温暖化が進んでいるとの論調一辺倒。政府もCO2などの温室効果ガスの排出量を25%削減するという目標を掲げて、目標達成のための政策論議を始まりだした。
日本の社会は100%地球温暖化説を支持しており、トラックやバスといった大型車両は産業・社会に必要不可欠な車両までハイブリッドや電気で走行させようと努力しているのだが、大丈夫か。国際社会はしたたかだ。そもそも前提となる地球温暖化論議が揺らいでいることに対して、政府も、マスコミも関心が薄いことも気にかかる。
【DANN編集長】
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トヨタ自動車の豊田章男社長は24日に開かれる米下院監視・政府改革委員会の公聴会に出席することを決めた。同委員会のタウンズ委員長が18日に豊田社長を正式に招致したことに対して決断した。自らが誠心誠意説明し、信頼回復を図りたいという。
17日に東京で開かれた記者会見後、公聴会への出席に否定的だったと、国内外のプレスが報じた。記者会見では、記者から再三にわたって、公聴会への出席する意思の有無を確認する質問があったが、豊田社長は意図的に本人の意思にかかわる答えは避けて、「北米トヨタの稲葉社長が公聴会には出席する。それを本社でバックアップする」との回答を繰り返していた。
会見終了直前、また同じ質問が繰り返されたとき、「現時点で委員会からの正式な招致がない。承知があれば考える」と豊田社長本人の出席の意思の有無に関わる答えをした。これが報じられて、あだになった格好だ。「(招致が)ないから出ない」と言われれば、相手は招致するに決まっている。
国内景気の回復、雇用の問題で手詰まり感のあるオバマ政権。労働組が支持母体のひとつでもある民主党としても、GMの不振を呼び込んだ原因のひとつである日本のトヨタをたたきたいところ。また、GM再建までの時間稼ぎでトヨタを足止めしたいなどと、いろいろな思惑がある。豊田社長が米国に行っても、行かなくてもたたかれることは決まっている。ならば、早いうちにという決断が、吉と出るか、凶と出るのか。かつて、公聴会に日本人になり済ました俳優を出してまで日本たたきを行ったこともある米議会、一筋縄ではいきそうもない。
【DANN編集長】
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二酸化炭素を主体とする温室効果ガスの排出量を2020年までに1990年比で25%削減することにした新政権。政府の事務方は「真水の部分」と呼ばれる温室効果ガスだけの排出削減量について、15%減、20%減、25%減の3段階で検討を始めたそうだ。
前自・公政権が掲げた目標数値は8%減。前政権の閣僚の中には15%減も可能だと主張したものもいた。それでも産業界に配慮、新車販売の80%はエコカーにするとか、太陽光発電を大量に普及させることで、景気に大きく影響する鉄鋼生産(粗鋼生産)は年1億2000万tを維持することを前提に計算した、と言われていた。
昨年の粗鋼生産は8753万t、産業が前提とする1億2000万tの27%減の水準だった。景気の低迷が主原因だが、頼りの自動車産業は中国やインドへの現地生産を加速させている。産業構造が変わり始めており、粗鋼生産量が1億tを上回ることも難しいのが、日本現状となりだ。
25%減という目標に日本の産業界はこぞって反対の声を上げているが、現実を直視すると、粗鋼生産量8000tなら鉄鋼産業はほぼクリア。いいのか悪いのか、日本国内は温室効果ガス25%排出削減となる産業構造に徐々に切り替わりつつある。
【DANN編集長】
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国内の景気基調が上向きだした中で、トヨタ「プリウス」のリコール問題が大きなマイナス要因となっている。経済産業省幹部によると、経済成長率や企業の景況感などをみても「基調として弱くない」としたものの、自動車が懸念材料と指摘した。
経済産業省がまとめる鉱工業生産で、昨年12月に小型乗用車などの輸送機械工業は前年比で上回ったものの、前月比で落ち込んだ。リコール問題にともなう生産調整で1月もマイナスが見込まれる。また、米国市場でのトヨタ車の安全性に関わる評価なども、今後の国内生産を左右することになる。
その一方で同幹部は「タイムラグは0.6秒、制動距離にして70pの差」などして、「マスコミも含めて騒ぎすぎの観がある」と、今後の景気回復のために早期に沈静化してほしいとの期待をにじませた。
また米国では、トヨタの工場がある4州の知事がこの問題で、米運輸省に対して「トヨタ車に対する異常なパッシングだ」などとしたレターを提出したそうで、部分的にはトヨタの応援団もいるという。2月24日に米下院で予定されるトヨタ車の安全にかかわる公聴会について、豊田章男社長が出席するかしないかが注目されているが、いずれにしても「通商摩擦にならないような対応」(同幹部)が求められることになる。
【DANN編集長】
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トヨタ自動車が、プリウスのブレーキのリコール問題で、決算説明会に続く説明会(2月4日)と5日、9日の2度にわたる社長会見で陳謝した。この問題でハイブリッド車の世界的な信頼が揺らいだら環境問題に対する日本車の戦略アイテム・ハイブリッド車がどうなるのだろうかとか、日本経済のけん引役であるトヨタがどうなってしまうのだろうかとか、不安のネタは尽きない。
最も心配なのは、トヨタそのものの対応振りだろう。リコールにするかしないかの判断に迷いつつ、説明会・会見を3回も繰り返した。世界最大の自動車メーカーだったGMに追いつくことを目指していたときのトヨタで、こうした姿を見たことはないし、見せたこともない。
裏を返せば、行政を丸め込んでいたともいえるし、グローバル化がそうは進んでいなかったので日本の中だけの問題処理で事足りていたといえるのだろう。
ただ、明らかにこの間の軸ぶれは心配だ。従来から指摘され続けてきた組織の肥大化にともなう硬直化の現われのようにも見える。森羅万象、盛りを過ぎれば下降線をたどる。トヨタがこの難局を乗り越えて上昇軌道を回復し、エコカーとしてのハイブリッド車の信頼を揺るぎないものとすることを祈りたい。
【DANN編集長】
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トヨタ自動車のプリウスがブレーキの利き具合の問題で、改めユーザーに情報が遮断されていることに気づかされる。トヨタは、苦情が多いことから先月生産分のプリウスから対策を採り、システムを改善していた。ただし、あくまでも「ブレーキの利き具合に対する感覚の問題」という立場で、当初はリコールとせず、問題が大きくなってからリコールの検討を始めた。
ハイブリッド車特有の回生ブレーキとアンチ・ロック・ブレーキ(ABS)のコントロールが原因し、電子制御が進んだ結果の問題だ。ハイブリッド車などの自動車の電気化、メカニズムの電子制御の進展は加速中で、同種の問題が今後も起きる可能性は大きい。
これまでブレーキなどの重要保安部品をリコールするかについて判断に迷うと、自動車メーカーは国土交通省におうかがいして対応を決めてきた。軽いものなら製造途中で対策し、リコールとはせず、定期点検で入庫した際に対策するケースがほとんど。リコールにすると混乱を巻くこともあるからで、今回のプリウスはこれが仇となった。だからトヨタ内部では「機構的には問題ない」などとリコールに対する慎重意見もでてくるのだ。
パソコンではアップデートによるシステムの手直しが当たり前。電子制御が進めば、自動車のシステムもアップデートされるものだと理解できる。その対策をどう進めるか、今後は情報の公開を原則にしないと余計に混乱を生ずるものと考えられる。
【DANN編集長】
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登録車、軽自動車を合わせた1月の新車販売が、前年比21.5%増の36万6659台に達した。エコカー購入補助やエコカー減税といった政策の下支えで、国内自動車市場にどうにか底打ち感が出てきた。
昨年 11月以降、登録車で前年比35%増、軽自動車を含めると20%アップという状況が続いている。このペースが維持できれば、09年度の販売はどうにか480〜490万台の水準を確保できる見通しだ。09年暦年の販売台数460万台を上回ってはいるものの、500万台に手が届かない。数字的には上向いているものの、「政策的な支援があっても、08年度の水準まで届いていない」と関係者は警戒感を強めている。
とりあえずエコカー購入補助は半年延長したものの、市場動向に不安要素も多い。とりわけ春闘では、早々にトヨタ労組が要求を見送っている。さらにトヨタ自動車は、世界的なリコール対策にも追われることになった。トヨタが沈むと、多くの取引先が右に倣いを決めることになる。こうした日本的な慣行が不安材料、景気回復も遅延するかもしれない。
【DANN編集長】
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