地球温暖化を防止する究極の車社会のあり方は、「500年は持つ」と言われる化石燃料を水素と炭素に分解し、水素だけを燃料に使い、炭素は海底深く埋蔵すればよい―。だからというわけでもないのだが、経済産業省は、水素の貯蔵や輸送に関する技術開発に乗り出すことを決めた。産業総合研究所内に研究センターを設置し、2006年度から12年度まで技術蓄積を進める。
産業総合研究所と言えば、旧「工業技術院」時代から自動車のパワートレイン開発に取り組んできた。しかし、「今の時代、自動車のエンジン開発だけでは、国からの補助金が出ない」と産総研OBは語る。そこで、水素社会を前提にした研究開発に本腰を入れることになったのだが本格的な取り組みが始まるのだが、実用化につながるかどうかは疑問だ。通産省時代、カナダの膨大な水資源を活用し、水力発電で水を分解し、水素を作り、エネルギーとして日本に持ち込んでくるという研究プロジェクトに取り組んだことがあった。しかし、その後の話しは聞かない。
今回も同程度に実用化は「眉唾(まゆつば)」といえる。
先端技術の開発は莫大な資金が必要になる。米国では軍事産業がこれを担ってきた。大手を振って軍事産業を育成できない日本では、突拍子もない構想で先端技術の研究開発を維持する資金を投入するしかないのだ。このベースになるのが、今は水素社会で、自動車では燃料電池自動車ということになる。先端技術の開発に取り組むことで、まったく思いがけない成果を手に入れる可能性もあるのだ。
かつての「自動車用小型セラミックガスタービン」の開発プロジェクトでは、ガスタービンエンジンが実車に搭載されたわけではないが、日本のセラミック利用技術を大幅に進めることに成功した。国力を維持するためには、深謀遠慮は欠かせない。
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