一般記事
中国の労務費が上昇傾向にある。ホンダに続いてトヨタ、日産の中国工場も賃金引き上げを求める労働争議の影響を受けているのだが、いずれも中国に進出した部品メーカーが火種となり、完成車工場に波及した。
連続自殺まで起きた広東省深センの電子機器部品製造受託メーカーの「フォックスコン」の争議と同時に起こったホンダの広東省にある変速機工場のスト、どちらも賃金を大幅に引き上げることで決着した。フォックスコンの場合、コンピュータ関連の世界最大企業で、しかも資本が台湾系のために謀略説まで流れたが、日系自動車メーカーの商慣行の違いがあるようだ。
ホンダ系変速工場で労働者が側の掲げた賃上げ要求は、ホンダ車の組立工場並みで、争議は可能な限り近づけた1900元あまりで決着した。日本では自動車メーカーと系列部品メーカーに格差があるのは当たり前で、ワーカーに限らず経営者からエンジニアに至るまで部品メーカー各層の賃金水準は、自動車メーカーの各層よりも低くなければならないのが日本のしきたりになっている。中国人にはそれが我慢できないらしい。
日本の自動車産業は「垂直統合」で自動車メーカーが常にトップに君臨してきた。一方、成長が著しい中国自動車産業は「水平分業」、ケースによっては部品メーカーが主導権を握ることも十分か考えられ、自動車メーカーがトップに位置するわけではない。同じ製造部門なら、完成車の組み立ても部品の生産も賃金は同じということで、日本的な慣習は通用しそうもない。
【DANN編集長】
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ガソリンスタンドが減り続けている。経済産業省資源エネルギー庁の調べでは、今年3月末時点で、登録されているガソリン販売業者(揮発油販売業者)は前年比3.3%減の2万0365事業者、ガソリンスタンド数は同4.1%減の4万0357カ所。09年4月〜10年3月までの期間で、新設されたスタンドは308カ所、それに対する廃止は2041カ所と大きく廃止が新設を上回ったものの、ぎりぎり4万カ所切りを免れた。
スタンド数は1995年3月末の6万0421カ所がピーク。その後断続的に減り続け、2000年3月末は5万5153カ所に、さらに21世紀の10年間でスタンド数は3分の2に減ってしまった。
主力のガソリン販売が過当競争で利益を出せない構造となり、事業者の経営を圧迫、スタンド設置件数の減少につながった。経営を続けていても、石油元売り系の販売会社に切り替わり、大型化したスタンド設置が進んでいる。都心部などでのユーザーの月間走行距離の減少もガソリン消費を減らし、売り上げ減に拍車をかけた。
今後、「プリウス」などハイブリッド車が普及し、同時に小型車の燃費改善が進むと、さらに給油の頻度は減少することになる。スタンド数が減れば減ったで、価格コントロールはしやすくなるが、ガソリン価格が高値に張り付くようになれば、ユーザーのエコカー指向が強まることが見込まれ、ガソリン消費を抑制する。厳しい経営環境にある。
【DANN編集長】
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自動車に使用される鋼板のハイテン化が進んでいる。引っ張り強度が高いハイテンの使用が増えるのは、車体軽量化が必須課題になっているからだ。
90年代後半にはフレーム系の部品は440MPa(メガパスカル)だったが、前後のサイドメンバー(セダンタイプでエンジンルームやトランクを支える下部のフレーム)はすでに590MPa級のハイテンが使われだしており、さらに強度が必要となるセンターピラーなどは980MPa級。部位によっては1500MPa級の超ハイテン材が使われだしている。
ルーフパネルなどに使われる薄板の引っ張り強度は270MPa級だから、どれだけ特殊な鋼板が使われているかが分かるというものだ。ハイテン利用はさらに進み、現時点で使用鋼板の半分ほどがハイテン、2015年に全体の60%に達するという。
ハイテン利用の要求は、自動車の付加価値と表裏一体だ。自動車は衝突安全基準を満たすための安全性向上や快適性能向上装備の装着増で車両重量は増加の一途。その一方で、地球温暖化防止のためには車両重量軽減が必要になっており、この矛盾を解決するための手段として高張力鋼板の利用拡大が進み、今後も進む。
引っ張り強度が高いハイテンは、ボディー修理をする側には取り扱いが難しく、高い技術が必要になる。ハイテンの利用拡大とハイテン自体の強度増強で、修理屋泣かせの自動車が増え続けることになる。
【DANN編集長】
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日本バス協会は、国土交通省に対して緩和したバス関連の事業規制をもとに戻して強化するよう要望する。再規制強化の要望を明確に打ち出したのはタクシー事業者に続くものだ。最大のターゲットは、旅行会社などが貸切バスを借り上げ、東京―大阪といった都市間を結んで運行しているいわゆる「ツアーバス」にしている。
従来、都市間を結んで運行する高速バスは、バス事業者にとって稼ぎ頭となっていたが、規制緩和によって登場したツアーバスが、格安料金でサービス提供したために顧客を奪われ、事業者にとって大きなダメージになっていた。また、規制緩和で台数増となった貸切バスが低料金の輸送サービスに転用されているため、貸切バスの料金ダウンも招く結果となっている。
規制強化の要望は安全な輸送サービスを実現するため、と日バス協はいうのだが、こうした規制強化の要望を労使一体で取り組んでいくことに首をかしげたくなる。バス事業者関連の主力労働組合である私鉄総連は連合傘下で、連合は民主党の支持団体。一方、バス事業者の経営者団体である日バス協も、民主党が政権奪取した後は、自民党から民主党に支持政党を乗り換えている。
まさに労使一体で民主党を支持し、政権与党に働きかけていくのだからひとたまりもない。「東京―大阪が日によっては3000円台」などという格安バスは風前の灯。景気が回復せず所得も伸びない経済環境下で、また一つ、庶民の生活の支えが奪われていく。
【バス狂】
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タイヤの世界も低燃費であることが大きな商品力になってきたようだ。タイヤ業界はタイヤの燃費性能を消費者に分かりやすく示した自主的なラベリング制度を今年からスタートしており、同制度の最高ランクとなる転がり抵抗AAAの低燃費タイヤが登場する。
発売となるのはブリヂストンの「ECOPIA EP100S(エコピア・イーピー100エス)」と東洋ゴム工業の「SUPER ECO WALKER(スーパー・エコ・ウォーカー)」で、製品発表は東洋ゴムが早かったが、ブリヂストンは6月25日に販売開始を予定、7月1日発売の東洋ゴムに先着する。
低燃費タイヤのラベリングはタイヤの転がり抵抗をAAA、AA、A、B、Cの5段階で、抵抗の小ささと反対要素となるタイヤのグリップ力に関して、雨天時のウエットグリップ性能をa、b、c、dの4段階で表示する。ウエットグリップ性能は目安のようなもので基準内のどのランクでもOKだが、転がり抵抗でA以上を低燃費タイヤとしている。これまではAAランクが最高だったが、CO2排出削減にあらゆる市場ニーズが大きく傾く中でAAAが登場した。
低燃費タイヤは、タイヤメーカー各社がコンパウンドを開発したり、グリップ力を増すためのトレッドパターンを工夫したりして、転がり抵抗が小さく、グリップ力もあるタイヤとして提供しているのだが、低燃費タイヤに変えても急発進、急加速を繰り返していては、燃費性能向上の効果は期待できない。ちなみにミニバン用タイヤなど、このラベリング制度の枠外に置かれているものもある。
【DANN編集長】
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日本の自動車保有の減少傾向が定着した。自動車検査登録情報協会によると、2009年3月末の国内自動車保有台数は7869万3495台で、前年の3月末に比べ比10万7047台減少した。納税義務が4月1日時点の保有者に発生する関係で、3月末に登録を抹消される車両が多く、年間でも最も保有が少なくなるが、08年から3年連続の前年比マイナスとなった。
一方で、軽自動車を含む乗用車は5790万2835台で、22万0360台増となり、1966年の統計開始以来、過去最高の保有台数を記録。内訳をみると、普通車は1669万8953台で前年比4万0183台のプラスに、また小型車は 2371万 9967台で同42万0508台減と落ち込みが続いている。大きく伸ばしたのは、軽自動車で同60万0685台増の1748万3915台となり過去最高となった。
乗用車保有の増加は、エコカー減税やエコカー補助金による新車販売の押し上げたものとみられるが、軽自動車の登録未走行車(いわゆる新古車)の積み増しも大きく影響しているようだ。
貨物車は1553万3270台で前年比32万5479台減、ピークとなる91年の2114万6204台から19年連続で減少した。景気悪化による設備投資の抑制や減車が貨物車の保有減につながっており、自動車保有の面でも「縮む日本」が色濃く表れている。
【DANN編集長】
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電気自動車ばかりが目立ったエコカーワールド2010(6月5、6日、横浜で開催)。欧州車はすべてプレミアムガソリン対応だと思っていたが、BMWが展示していた「アクティブハイブリッド7」がレギュラーガソリン仕様だったことが、プチ発見。ちなみにベンツのハイブリッド車はプレミアムガソリン仕様だった。
ガソリンの性状を表す項目はいくつかあるが、手っ取り早く「オクタン価」、すなわちノッキングの起きにくさを示す指数で評価する。指数が大きいほどノッキングはしにくく、日本のレギュラーガソリンは93前後で売られており、プレミアムガソリンは98以上。一方、欧州ではレギュラーガソリンのオクタン価は95前後、それに対応したエンジンを搭載しているため、欧州車が日本で発売されるとプレミアムガソリン仕様ということになる。
新登場のBMWのアクティブハイブリッドはオクタン価89に対応しているそうだ。ようするに、品質の悪いガソリンが販売されている地域に対応したハイブリッド車ということになる。
欧州のユーザーは「コストパフォーマンスを重視する」ため、エンジンにモーターをプラスしてコスト高になったハイブリッド車を敬遠する。もっぱら市場は中国、日本、米国をターゲットにしているそうで、ガソリン対応をみると、新しいものを好む中国を重点市場にしている様子だった。
【DANN編集長】
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エコカー購入補助金などの政府支援策で上向きだした国内新車市場で、ハイブリッド車ブームが鮮明になってきた。5月の販売実績を見ると、主力モデルにハイブリッド車があるかないかで、各社の回復動向に差が出ているからだ。
5月販売でトヨタ自動車、ホンダは08年秋のリーマンショック前の水準を大きく回復したが、日産は08年5月実績横ばい。一方、軽自動車を主力とするスズキは08年5月に対して5.5%減、同じくダイハツは11.2%減だった。軽自動車は、エコカー補助金で「新古車」と言われる未登録車の魅力が薄くなり、その影響が新車販売のマイナスとなっている。
トヨタ自動車の今年5月の実績は11万2千台、07年5月の水準(11万台)も上回る回復ぶりだが、そのけん引役は月間2万7千台を販売して車種別トップのプリウスだ。ホンダも5月は4万4千台余りを販売したが、3千台強のインサイト、2500台のCR―Zがけん引した。
悩ましいのが、ハイブリッド車が売れる分、他の車種が売れなくなっていることだ。とくにトヨタは、08年5月は5千台レベルの販売水準だったプリウスが、2万7千台を記録しても、その伸び分が丸々上積みされているわけではない。本当に市場が回復したのか、エコカー補助とハイブリッド車のブームに市場が踊っているだけなのか、見極めが必要になる。
【DANN編集長】
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経済産業省がパブリックコメントを求めている「エネルギー基本計画」の中で、電気自動車に欠かせなないレアメタルのリサイクルを政策として明確に位置付けることにした。原油、天然ガスなどの化石燃料と同時に今後の低炭素化社会にとって希少金属の戦略的確保が欠かせないからだ。
とりわけ、電気自動車やハイブリッド車の次世代自動車になくてはならないレアアース、リチウムについて「戦略レアメタル」と位置づけ、海外での資源開発に加え、リサイクルによる供給確保により、2030年に自給率で50%以上を目指すという。
EV関連レアメタルに関して、電池はともかくモーターの永久磁石に使われるレアアースは、磁石への添加量が少なく、現状では採算に乗らないと言われる。その一方で、2020年には乗用車販売の半分は次世代自動車するというエコカー普及の戦略目標がある。EV関連レアメタルのリサイクルが本格化するのは、その前後になるのだろうか。
もちろんそのためのリサイクル技術の開発を自動車メーカーは進めている。ハイブリッド戦略でエコカー普及を進めるトヨタ自動車は、ハイブリッド車、電気自動用電池のリサイクルについて回収ルートの明確化に加え、さらに一歩踏み込んだ体制構築を進めることをすでに検討し始めている。
【DANN編集長】
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