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新型「プリウス」の納期が8カ月以上も先になる。トヨタ自動車は新型「プリウス」の納車めどについて、6月28日以降の受注分の工場出荷予定が2010年2月以降になることを明らかにした。エコカー購入助成は現時点では来年3月末までとされており、納期の関係でエコカー購入助成の恩典が受けられなくなる可能性もある。
6月末までの受注分は「来年2月以降」というのはあくまでも工場出荷の話で、廃車配送の都合や納車準備で、実際に購入者の手元に車が届くのは来年3月以降にずれ込む。始まっているボーナス商戦でこれから「プリウス」購入を決めても、この時期は受注件数も増えるため、さらに納車が先伸ばしになることは確実だ。エコカー購入助成がふいになるユーザーも出てきそうだ。
トヨタ系ディーラーは、エコカー減税と購入補助を追い風に新型「プリウス」の受注拡大を進め、受注の6〜7割が新型「プリウス」という状況もある。助成期間が延びないことでの影響が出れば、底割れ感が出てきた新車販売が再び下降することにもなりかねない。
エコカー購入助成をあと2年、2012年3月末まで延ばしてほしいというのが自動車業界の要望。経済産業省もこの方向に傾きかけている。ハイブリッドカーだけが売れるのが健全かどうか、という問題はあるが、早めに延長アナウンスがないと新車販売の現場は混乱することは必至だ。
【DANN編集長】
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都内江東区青海の「メガウェブ」で社長就任会見をしたトヨタ自動車の豊田章男社長に日本のマスコミ各社の好意的報道が目立つ。世界の自動車産業と日本経済を牽引する企業としてトヨタが早く黒字化し、豊富な広告出稿を願うマスコミ関係者は多い。その一方で、海外プレスは会見に物足りない様子で、とくにトヨタが柱とする「ハイブリッド戦略」に否定的だった外国人記者もいた。
商品戦略は「地域にあった商品構成に転換する」との方向を示したものの、その一方で「ハイブリッドは大きな流れ、積極的にシリーズ展開を進めて行きたい」という。中心となるのは、エコカーを重視する日本市場と欧州市場だそうだ。搭載電池の生産も2010年には年産100万台を確保できる見通しとする。
日本のマスコミはエコカーとしてハイブリッドをもてはやし、「レクサス」「クラウン」といった大型車のハイブリッドが「本当にエコなのかどうか」という問題に目をつぶる。電池その他を搭載し重量増にして「エコ」を宣伝するより、重量を軽減してエンジンの燃焼効率アップで「エコ」にしたほうが自動車としては王道であるなどと、ハイブリッド戦略を否定するトヨタのエンジニアもいる。
とはいうものの記者たちの質問は、今年に入り不振を極める中国市場の問題などを問うこともなく、創業家に戻ったと言われることへの心構えやモータースポーツとの今後の関わりなど、人柄をクローズアップする内容が多く、それはそれで日本の社会がトヨタの新社長に高い期待を寄せていることがよくわかった会見だった。
【DANN編集長】
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軽自動車ベースの電気自動車の発売が直前に迫っている。1台450万円を超えるほどの高額で、政府に加えて地方自治体からの助成を受けてどうにか220万円になるのだが、現時点でのユーザーは自治体などに限られる。
三菱自動車の「i−MiEV(アイ・ミーブ)」で1回の充電で160q走行できると言われるものの、実力的には七掛けか八掛け程度で、エアコンを付けるとさらに落ち100q程度と見られている。一方、市町村などの公用車は1日当たりの走行距離は40km前後で、1100qも走るような使われ方はしない。このため、「夜間に充電すれば翌日1日は十分走行できる実力はある」と販売担当者は説明する。
その一方で、不安材料も多いようだ。電気自動車は導入した各自治体にとって環境対策の目玉である。税金も投入するのだから自治体の各種イベントで引っ張りだこになることは間違いなさそうだ。「そのときにどのような使われ方をするのかが見えない」(販売担当者)ことが最大の不安材料。
しらずしらずに100qを超えるような使われ方をするかもしれない。充電を忘れてイベント会場に持ち込まれることもあるかもしれない。イベントで電気自動車が止まってしまえば、すぐに悪評が立つ。販売担当者の気苦労は耐えないようだ。
【DANN編集長】
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地球温暖化の原因になる二酸化炭素(CO2)を自動車用燃料に転換するプロジェクトがカナダのブリティッシュ・コロンビア州で始まろうとしている。
プロジェクトの概要は、同州の天然ガス精製工場が排出しているCO2を回収し、豊富な水資源を原料とする水素と化学反応させてジメチルエーテル(DME)を製造する。水素は水力発電、風力発電による再生可能エネルギーを利用し、水を電気分解して取り出す。天然ガス生成工場が1日2200t排出するCO2のうち2100tを吸収し、メタノールへの転換工程を経て1000tのDMEを生産する。
DMEは、日本では環境負荷が低いディーゼル燃料として注目され、DMEを燃料としたトラックをいすゞが開発。またメタノールから燃料DMEを作るプラントも新潟に作られた。
カナダでプロジェクトを推進するのは「ブルー・フューエル・エネジー」。カナダではDMEが青白い炎で燃えることと、環境に優しいというイメージから「ブルー・フューエル」と呼び、普及を目指しており、一足早くDMEトラックを走らせた日本に燃料として供給できる可能性を調査するために担当者が来日した。輸入が成立すれば、日本にとって中東に依存しない安定的燃料ということになる。どの程度の価格になるかなどについては現在フィージビリィティスタディ中で、8月末ごろに結論がでるそうだ。
【DANN編集長】
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米国の世界自動車産業のリーダー的コンサルティング会社、A.T.カーニーによると、米国の新車販売市場(小型車対象)は今年、対前年比24%減の年間1000万台まで落ち込むものの、2012年には1600万台までとV字型の回復を見せる見通しだ。
米国の新車販売は「景気の後退時期には急激に落ち込む」半面、回復基調となると「一定の買い控え需要が顕在化する」という過去の新車販売の推移がひとつの根拠となっている。基準のシナリオでは2012年1600万台だが、楽観的なシナリオでは1750万台まで拡大、最も悲観的なシナリオでも1290万台まで回復するという。こうした買い替え需要は2015年には840万台まで積みあがる見通しだ。
また、需要回復期に臨む自動車メーカーの戦略的ポジションは「車種の削減」にあるという。同社によると、自動車メーカー数および車種数は過剰となっており、米国で販売する車種は現在の336車種を214車種まで、その3分の1を削減する必要があると指摘する。さらに、自動車メーカー各社が市場回復をテコに飛躍するには、車種削減を決断できるかどうかのトップの決断にかかっているという。
自動車メーカーと直接取引する「ティア1」部品メーカーが厳しい市場の中で自らの健全な経営を維持するには、今後の2〜4年間で170億〜335億ドルの手元資金が必要になる見込み。今年の損失は大きいが、楽観的予測では2011年に「収益性は回復する」そうだ。
【DANN編集長】
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経済産業省所管の独立行政法人、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は国家プロジェクトで進める「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業」の概要を明らかにした。プロジェクトは、京都大学を中心に大学・研究機関・一般企業22法人が参加するコンソーシアムで実施。09年度から20015年度までの7年間、各年30億円、計210億円の国家資金を投じる。
政策的に掲げる目標はリチウムイオン電池の信頼性向上とともに現行水準5倍以上のエネルギー密度を持つ電池を実現することだ。しかし見える成果としては、300kW/sのボタン電池型のリチウムイオン電池になるという。現行は100kW/sだから性能は3倍。100kWの現行リチウムイオン電池だと電池重量150sで小型電気自動車を90q走行させることが可能となる。それが270qまで伸びる理屈だが、ボタン電池では車への搭載までにはさらに開発時間がかかる。
もともとプロジェクトは、地球温暖化対策で各国が電気自動車に注目して研究開発に力を入れだしたことに触発され、日本の電池技術の国際競争力を強化することを狙いに取り組むことにした。しかし成果は「肩透かし」だと思うかもしれないが、現実の世界は政策的に描かれた電気自動車普及シナリオとは異なり、こんなものなのだ。
ただプロジェクトの過程で、電池開発に取り組む人材が育成されたり、材料反応の挙動がより精密に分かったりする。そのことで、電気自動車の性能アップ以上の成果が得られる可能性があるかもしれないのだ。
【DANN編集長】
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エコカーとして鳴り物入りで登場したクリーンディーゼル車が、すっかりなりを潜めてしまった。6月6、7日に神奈川県横浜市で開かれた「エコカーワールド2009」でも商用車に混じって日産「エクストレイル」のクリーンディーゼル車がポツリと1台展示されていただけで、ハイブリッド車と7月から発売される電気自動車に話題を奪われ、エコカーの舞台から弾き飛ばされた感がある。
ディーゼル車はガソリンより安い軽油を利用し、燃料代の負担軽減を図れるのがメリットだが、今の時代、長距離を走るユーザーは多くはなく、ディーゼル車のメリット享受できるユーザーは限られる。エコカー減税、購入補助も同じだが、トヨタ、ホンダが車両価格200万円で勝負するハイブリッド車にクリーンディーゼル車がついていくのは難しい。
半面、クリーンディーゼル車の市場が形成されなかったことを「日本の自動車の進歩がさらに10年遅れた」と評価する向きもある。日本ではエコカーとして「電気自動車が究極」とされるが、電池の性能限界のために「内燃機関の効率化技術が不可欠」とみるからだ。
もともとトヨタ自動車はディーゼルエンジン開発に後れを取っており、その結果がハイブリッド車に行き着いた。ハイブリッド戦略は現時点では有効だが、それだけで世界に通用するのかどうか。世界市場が多様化していることも、日本自動車産業の将来にとって不安材料になっている。
【DANN編集長】
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GM経営破綻で売掛金の焦げ付きが心配される日本の自動車部品メーカー各社だが、本当の危機はGMの再建後にあるという。日本車メーカー系列に属さない大手部品メーカー社長の心配ごとは「GMに対する債権は保証リストに載れば回収が見込める。問題はGMの再建・縮小に伴う受注減、さらにその後の世界の自動車産業勢力図の変化に対応した取引先を見つけること」だと話す。
世界景気の回復過程で、世界の自動車産業の勢力図は大きく塗り替えられると言われるが、それがどうなるかは不透明。GMの再建過程で不良ブランドが切り捨てられるため、受注量は確実に減少する。それをカバーしようとしても、相手先には同業他社が納入済みで簡単に新規受注を取ることもままならない。
また、中国市場では拡大は見込めるが、高いリスクを覚悟する必要がある。次の10年を考えて、安定的な取引を目指したいところだが、相手をどこに絞るかが難しい。
もちろん部品メーカーとしての提案力も問われる。「新しいものを提案できなければ、自動車メーカーに買い叩かれるだけ、設備投資の費用も出ない」(部品メーカー社長)からだ。しかし、提案しても自動車メーカーが採用するかどうかは分からない。「先行開発も博打のようなもの」だそうで、日本車の品質を下支えてきた日本の部品メーカーは一段と厳しい経営環境におかれだした。
【DANN編集長】
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燃料電池車の普及シナリオが日本の国政レベルで生きている。国内の自動車関連技術者の多くは、ここ10年、20年のうちに燃料電池車の本格的な普及が始まるのは無理だと考えるようになっている。ただ、資金を提供する行政は必死に旗を振っており、先日(5月27日)も自動車関係のジャーナリストを集めて、燃料電池車の国家プロジェクト(JHFCプロジェクト)の説明会が行われた。
説明会では08年度までのプロジェクト目標と今後の開発目標が紹介された。国費を投入して研究開発を進めている以上、関係者は報告する責任がある、ということのようだ。
開発のベースには、2015年から一般ユーザーへの普及を目指すという目標が掲げられている。しかし、その前提として2010年には5万台程度の燃料電池車が走っているはずなのだが、現在は60台程度。しかも現時点で燃料電池車の価格は1台1億円、水素の供給設備も1カ所6億円かかるそうで、普及に向けて、最低でも車両価格は500万円程度、スタンドも1カ所2億円までにコストダウンする必要がある。
冷静に考えれば、当低無理な話だが、一方で「万が一、他国が燃料電池車の低価格化を実現するかもしれない」という強迫観念がある。新興市場の急成長、GMの破産等々、不透明感が増している環境下で「博打」的な研究開発投資が進む。これも一種の行政の無駄遣いかもしれない。
【DANN編集長】
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