ガソリン価格の高騰にともない、「何としても本則税率に戻す」という民主党の主張に親近感が沸いてくる。消費税は別として、1g当りのガソリン価格には揮発油税48.6円、地方道路税5.2円、合計で53.8円の税金が含まれる。小売価格が155円だとすると、3分の1が税金となるわけだ。
ただし、この税額は「租税特別措置法」に基づき、割り増しの暫定税率が課せられているからで、もともとの税額は、揮発油税24.3円、地方道路税4.4円の計28.7円。この暫定税率を規定する租税特別措置法は、来年3月末で期限切れを迎え、法案が通らなければ本則に戻り、その税額は25.1円安くなる。現行のガソリン価格が続いたとして、本則に戻り減税されることになれば、ガソリン価格は130円前後に落ちつき、家計的には一服感が出てくる。
もちろん「本則に戻ると困る」という人たちもいる。ガソリン同様軽油にも軽油引取税が課税されている。現在の税額は軽油1g当り32.1円、もちろん暫定税率で、本則は15.0円である。
ガソリンと軽油の小売価格の差はほぼ課税分の差で、1g当り20円が長年の相場となって推移してきた。これが本則に戻ると、差は13.7円となり、軽油を使うメリットが薄れてしまうことになる。ガソリン車に比べて軽油を使うディーゼル車は、トラックなどでも車両本体価格は割高になっている。これを燃料価格の差で補いながら、乗り続けることでディーゼル車は割安となっており、当然、この魅力は薄れる。地球温暖化対策で政府はクリーンディーゼル乗用車の普及を目指そうとしているが、これに水を差すことになる。
さらに深刻なのは、バスやトラックなどの軽油を多量に使っている業界だ。軽油引取税に割り増し税率が適用されて以降、「運輸事業振興助成交付金」が創設され、都道府県単位でそれぞれの業界団体に支援金、早い話が「割り増し税率のキックバック」が制度化された。もちろん政策的な費用であり、ドライバーの福利厚生や低公害車の導入費用で使用されて入るのだが、本則になるとこの政策資金が出なくなる。
あちらを立てればこちらが立たず。道路財源の問題ばかりでなく、長い間、積もり積もって、自動車税制ひとつとっても日本の制度疲労が進んでいる。
【行政ウォッチャー】
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