国土交通省所管の独立交通行政法人、交通安全環境研究所と燃料供給系部品メーカーのニッキは、LPG(液化石油ガス)「液体燃料噴射システム」の共同開発に着手した。経済産業省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの補助を得て取り組まれるもので、08年度までの計画で実用化を目指す。
政府補助で新システム開発―、となると何かものすごい話に感じるのだが、実は世界で進んだLPG燃料噴射技術の後追いに過ぎないものなのだ。
日本でLPG車といえば、タクシー車両を思い浮かべるが、そのほとんどが「ミキサー方式」という世界的にも古いシステムが踏襲されている。LPGは通常は気体、圧力をかけて液化している。その液体LPGを減圧してガス状に戻し、空気と混合してエンジンに供給する。手っ取り早くいえば「キャブレター方式」のガソリン車と同じような機構のエンジンなのだ。
現在のガソリン車新車にキャブレター方式の車両はない。インジェクション=燃料噴射装置が採用されて、シングルポイントから気筒ごとに燃料噴霧を行うマルチポイントに進化した。中にはエンジン気筒内に直接噴射する直噴式エンジンもある。これを追って、LPGエンジンを高性能で、燃費の良いものに進化させようとするのが、この実用化プロジェクトになる。
技術的にはヨーロッパの専門メーカーが1990年代後半に開発、実用化済み。韓国の現代自動車もLPG液体燃料噴射システムを独自開発し、商品化している。
それに対して日本では、LPG元売りがオランダからシステムを輸入し、普及を目指そうと動いたが、エンジン耐久性とのミスマッチで頓挫。ニッキが気噴システムを数年前に開発し、一部の車両に採用され始めている。これに続いて、ニッキは液噴システムの実用化も目指すことになった。当然、トヨタ自動車もLPG液対噴射システムを開発しており、来年にはタクシー、小型トラックなどで登場する見通しである。
ようやく日本のLPG車も進化を遂げることになりそうだ。
【DANN編集長】
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