成長著しいBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)での販売シェアを確保するために自動車メーカー各社が、低価格な戦略車投入を検討し始めた。トヨタ、日産、ホンダにつづきスズキも、ロシアにインド製乗用車を投入し、マーケットの拡大を目指す。
低価格戦略車のターゲットは各国の中所得者層だ。BRICsの自動車販売は06年で1315万台となり、米国、欧州に次ぐ市場規模に達している。人口比でみれば、中国、インドをはじめとし、さらに市場が拡大することは確実で、そうした市場でどうシェアを伸ばすかは自動車メーカー各社にとって重要な戦略課題になる。
しかし、低価格な戦略車は企業にとって重要課題だが、けして良いことばかりではない。戦略車で市場を掘り起こせば起こすほど、BRICsの自動車保有が増え、エネルギー需要は高まる。国際的な原油高の要因を作るわけで、代替エネルギーのバイオエタノールも、ブラジルが自国で消費するのが精一杯となり、輸出に回す余力がなくなる。
しかし、低価格な戦略車は企業にとって重要課題だが、けして良いことばかりではない。戦略車で市場を掘り起こせば起こすほど、BRICsの自動車保有が増え、エネルギー需要は高まる。国際的な原油高の要因を作るわけで、代替エネルギーのバイオエタノールも、ブラジルが自国で消費するのが精一杯となり、輸出に回す余力がなくなる。
マーケットは正直だ。良くて安い日本車があふれかえっている日本市場は、8月の新車販売も34万7千台あまりで、前年同月比3.3%減となり、17カ月連続して前年同月を下回った。「わくわく、どきどきさせたい」(トヨタ自動車・渡辺捷昭社長)などと、最近、ことあるごとに日本メーカー首脳は商品力強化を口にするが、新車効果の期間は短く、商品的魅力の決定力に欠ける。それを招いたのも、開発で「良いものを安く」を追求し、日本車の道具化を進めたからに他ならない。
新車が日本市場で売れないだけならまだしも、日本車に魅力がなくなると、社会的な関心が薄くなり、若いエンジニアが育たなくなるし、自動車産業に就職しようとも思わなくなる。BRICs戦略車、企業としては次に打つ必然手ではあるのだが、日本の自動車産業にとって、大きなジレンマになるかもしれない。
【DANN編集長】
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