地球温暖化の防止のために、「カーボンニュートラル」と位置付けられるバイオエタノールをガソリンに混入する試みが始まっている。当面の目標は2010年までに「E3」、つまりガソリンの国内消費量の3%をエタノールに切り替えることで、そのために必要な180万kgのエタノールの手当てがままならない。輸出余力があるブラジルから輸入が、手っ取り早い対策だが、専用船がなく現状では輸入も困難な状況にあるという。
問題は、エネルギー経済研究所が「エネルギー導入政策の課題」とする研究報告の中で指摘したものだ。まず、供給先としてアメリカ、中国、インド、ブラジルを比較検討したところ、トウモロコシを原料とするアメリカはコスト高、中国は耕地面積が横ばいになる可能性が高い。インドは2010年に100万kg程度の輸出力は見込めるが、石油の純輸入国であることなどで、不透明感が強い。
結局、あてになるのはブラジルだけ。ブラジルは07年に、世界全体のエタノール総生産量の38%に当たる1880万kgを生産するものと見ら、このうち300万kg程度を輸出に回している。順調に原料であるサトウキビの作付けや生産設備の拡大が進めば、現在300万kg程度の輸出余力が、2010年には600万kg程度に拡大すると見込まれるという。
一方、日本の国内供給力は、現在の休耕地を活用し、水田で稲を育てて47万kg、畑でその地に適した作物を植えて40万kg。水田、畑を一緒にして最適な資源作物を育てても128万kgが上限という。最大がんばっても、100万kg程度の自給力しか見込めないようで、当面、政策としての実現可能を考えると、ブラジルからの輸入が妥当であると結論付けている。
180万kgのエタノールによる環境への影響は、ガソリンにエタノールを直接混入するE3でも、相当分のエタノールを化学合成物質のETBEに変えて混入しても、420万tのCO2削減効果が見込めるそうだ。
ただし費用は900億円程度かかる。海上輸送に当たる専用船の建造をはじめとしたインフラ整備が必要になるからだ。1バレル=60ドルという原油価格を前提にすると、エタノール混合ガソリンは、税込小売価格で一般レギュラーガソリンより1円40銭高い127円50銭と試算。ただし、あなたがこのコストアップを認めても、専用船の建造がまにあわなければ、E3ガソリンの普及は進まない。
【DANN編集長】
|