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経済産業省の甘利明大臣が、張富士夫日本自動車工業会会長、渡文明石油連盟会長とのトップ会談で進めてきた「次世代自動車燃料に関する懇談会」が5月28日に報告書をまとめた。中身を吟味すると、低公害車として落ち着く先は地球温暖化防止に効果的な「クリーンディーゼル」になりそうだ。
報告書は5つの戦略とロードマップにより、2030年に運輸部門の石油依存度を引き下げるとともに、エネルギー効率向上を目指した対策を提示した。この中でクルマとしてイメージされたているものは、クリーンディーゼル車をはじめ、バイオ燃料車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッドなどの電気自動車だ。
まず燃料電池自動車は「2030年までにガソリン車並の低価格」にすることが打ち出されているが、水素を燃料にするには電池のセルの発電量をどう引き上げるかが基本的な課題になる。さらに値上がりが見込まれる白金について代替材料が発見されるのかとか、金属を腐食する水素をどのように蓄積しクルマに搭載するのかも課題。理想的な低公害車ではあっても、あと25年以内にガソリン車並の価格になるのは不可能に近い。もっとも、ガソリン車の販売価格を大幅に引き上げ、政策的に購入層を絞り込むようになれば、燃料電池車とガソリン車の価格差はなくなる。
一方、バイオ燃料は、すでに米国でバイオエタノールの使用量が上がっただけで、トウモロコシの価格が上がり、日本の食糧事情にも影響を及ぼすようになってきた。オレンジ畑がサトウキビ畑に変わっていったブラジルなど、さまざまな局面を考えると、今のままでは食糧への影響は大きい。期待できるのは、木材などから取り出すセルロース系エタノールだが、時間をかけずにエタノールを作ると大量のエネルギーが必要になり、アルコール発酵では時間がかかる。
プラグインハイブリッドを含む電気自動車は期待できると思われるが、モーター性能は飛躍的に向上しているものの、バッテリーの性能にまだ限界がある。いざというときに遠くまで走りたいと考えると、ユーザーの選択はガソリン車か、ディーゼル車になる。
結局、消去法で残る次世代低公害車はクリーンディーゼルになる。すでに「ポスト新長期」排ガス規制の強化は終わりといわれている。それよりも地球温暖化防止のために、熱効率がよく、排ガスも「きれいな」クリーンディーゼルが産業界の意向を踏まえた政策として待望されるということのようだ。
【DANN編集長】
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