輸入車販売大手のヤナセが、米デュポンの技術支援を受け、横浜、大阪などにある全国10カ所の自社ボディー修理工場でデュポンの水性塗料「スタンドハイ」を導入することを決めた。
昨年4月に大気汚染防止法が施行され、VOC(揮発性有機化合物質)の排出量の削減目標が打ち出された。ペイントを使用するボディー修理工場では、VOC排出量を減らすために揮発性有機溶剤を使用しない水性塗料導入に迫られている。ただし、この大気汚染防止法には抜け道があって、規制の対象となるのは21人以上の事業場だ。自動車メーカーの生産ラインは当然対象となるのだが、アフターマーケットの現場では、ヤナセを含む大手ディーラーのボディー工場など、その規模が限られている。
例えば、総従業員が30人を超えるディーラーでも規制は事業所単位だから、ボディー工場を本社から切り離し、10人ぐらいの規模の別事業所にすれば規制の対象にはならなくなる。そのくらい、自動車ボディー修理工場に限って言えば、規制の対象は少ない。それに加えて、ボディー塗装を行う事業者、その専任者は微妙な色合わせについての腕自慢が多い。色の調合を重要技術と思っており、それだけに昔から使っていた有機溶剤塗料を使うことに固執し、新しい素材を使うことを拒否する傾向が強い。
つまり、法規制の面でも、実作業の現場からも塗料メーカーにとって、自動車補修用塗料市場で水性塗料を拡大するには苦労が多い。この中で、ディポンが目をつけたのはヤナセということになる。もちろん横浜市都筑区にあるヤナセの「BPセンター横浜」は規制の対象であり、当然、水生塗料の使用に迫られる。水性塗料を使うことで修理工賃は2〜3割高くなるが、高級外車のユーザーには負担力もあるし、ボディー修理においても海外メーカー品質で塗装されることでの安心感もある。
ヤナセにとって、いち早く水性塗料を使った補修を行うことをデュポンとともに表明することで、修理の面でも「環境に優しい」とのイメージをユーザーに訴求できるメリットがある。
デュポンの目標は、自動車補修用塗料の10%と見られる水性塗料の50%シェアをとることと控えめだが、利益的には有利な市場だ。まして、ヤナセの全国200工場あまりの協力工場「ヤナセボディーショップネットワーク」に水性塗料を導入できれば、目標達成も容易になる。
【DANN編集長】
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