高級輸入車ブランドの構築にヤナセが欠かせない。距離をおこうとしていたメルセデスは言うに及ばずフォルクスワーゲン(VW)、BMWと日本の輸入車市場で上位を占めるブランドは、ヤナセの存在なくして語れない。
一時期、その存続も危ぶまれたヤナセだが、高級車ブームのなかで業績を急回復し、06年9月期(05年10月〜06年9月)連結では、3期ぶりに売り上げが4000億円を超えた。メルセデスをはじめとした輸入車販売は、新車4万2785台(前年同期比5.0%増)、中古車2万8627台(同7.2%増)で、新・中で4年ぶりに7万台の大台を販売した。同期間、ヤナセが販売したメルセデスの新車は2万9594台で、同期間中の総販売台数の6割を占めている。また、ヤナセが02年に販売を再開したアウディは4838台の販売となり、同期間全国で1万4719台の登録をみたアウディ車の32.9%、およそ3分の1をヤナセが扱ったことになる。
ヤナセは01年9月期連結決済で債務超過に陥り、銀行管理下におかれた。この時期から見れば180度の変身だ。インポーターとして持っていた輸入車の輸入代理店権を各ブランド在日法人に相次いで奪われ、縮小均衡の連続で最終局面を迎えたかと思われたが、市場の二極化と高級車ブームの中で抱え続けてきた良質の顧客がヤナセの力になり、「高級輸入車ディーラー」として市場での重みを増している。
メルセデス以外でも、現在上位を行く輸入ブランドはいずれもヤナセを巻き込んでいる。BMWは03年に「ヤナセ・バイエルン・モーターズ」を設立し、負担が重くなっていた直営ディーラー店の運営を任せた。また、VWは高級SUV「トゥアレグ」を国内販売するに当たりヤナセと和解、04年にヤナセはVW車を扱う「ヤナセ・ヴィークル・ワールド」を設立した。高級車販売には、ヤナセの販売力が必要不可欠ということだ。
これから注目されるのは、低落したボルボがヤナセとの提携でどうブランドを再構築するかだ。ボルボ車を扱うヤナセ・スカンジナビア・モーターズが昨年7月に設立され、スバル系ボルボ販社から15拠点を譲り受け、営業をはじめた。同社の福田浩社長は「どうせやるなら総販売台数の半分は抑えないと面白みがない」と意欲示す。ちなみに06年9月期のヤナセのボルボ車販売は151台で、同期間全国で1万1305台販売されたうちの1.3%に過ぎない。このヤナセのボルボ車販売が拡大することで、ボルボのブランドが回復するのかどうか。07年の輸入車マーケットの注目点の一つといえる。
【DANN編集長】
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