バイオディーゼル燃料(BDF)で、アジア各国の燃料品質基準を同じにしようという動きがでている。バイオ燃料といえば、「バイオエタノール」でガソリンエンジン利用が主になるのだが、トラック、バスなどの産業用車両は軽油が主流になっている。東南アジアでは成長が早い搾油植物が多いことから、これを原料にBDFを製造し、小型トラックや産業車両用の軽油に混入して使おうと動きだしている。
ただ、困ったことに、各国のBDFの原料が違っている。タイ、マレーシア、インドネシアはパームだが、フィリピンは同じ椰子類でもココナッツだし、中国やインドでは荒地に強い「ジャトラファ」の種から油を搾り、ベースの油を作ろうという。どれも欧州などで取り組まれている大豆やヒマワリなどに比べると、効率は良いよいのだが、品質が違うと困ることになる。
一番困るのは、東アジアで自動車を供給している日本車メーカーだ。すでにディーゼルエンジンは排ガス制御を精密化し、小型ディーゼルも高圧噴射のコモンレール化している。現在でも各国の軽油品質の違いによりエンジンのチューニングを変えているのだが、そこにBDFが加わると、種類によって基本的なセタン価(爆発しやすい性質を示す指数)をはじめとした基本的燃料性状が変わってくるし、酸化スピードも異なり、対策が複雑化することが予測されるからだ。加えて、BDF混入率も各国でばらばらだ。
BDFは、基本的には植物油から「FAME化」というプロセスを経て軽油のように高温、高圧の状態で着火する成分を得たものだ。現在量の違いで成分に差が出て、酸化の進み具合が違ってくる。まだ本格的に使われていないが、成分によってはタンクあに穴が開いたり、燃料供給系が腐食したりする。また、排ガス浄化のために取り付けるDPF(ディーゼル排気微粒子除去装置)などの後処理装置にも影響がある。
日本で話題となる天ぷら油などの廃棄された食用油を原料にするなど、自動車の視点で見れば、原料に何が入っているか分からず「とんでもない話」になる。安定させるためにBDFを化学変化させ、性状を安定化する水素化技術が開発されているが、トヨタ自動車などにより本格的な取り組みが始まったばかりの状況で、BDFの使用がある。
そこで日本が音頭を取りBDFの企画標準化を進めることになったもので、ASEAN各国と中国、インド、それに韓国およびオーストラリアも加わって、政府系機関や研究者によって、調査・研究が始まろうとしている。
【DANN編集長】
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